ぴんぽんぱん

赤色 黄色 目を逸らして 走っていたい ひとつ ふたつ となりの親友 繋いでいたい 十四代 十五代 浮かんでいたい 合間 その合間 見なれた夜と その間 見てとれる朝 交差点で止まって 高架橋で 立ち止まるの ずっと みんなの視線を集めたら 過去だけを 勢いだ…

Gonna Live Forever

ある晴れた午後の日 能天気な雨が骨の髄まで侵した 私に居場所はないし 人は人の綺麗を押し付ける 君と永遠に生きたい 虫の羽音だけ空回る 皆は総じて「よく生きていたな」と言った ありふれた舞台の日 能天気な雨が肉と骨の髄まで侵した 浮雲は一時目隠しを…

秋の風物詩

夏の風物詩、と言われて何を思いつくだろう。 青い空、白い入道雲、急に降り出す夕立、揺れる風鈴、夜空に輝く打ち上げ花火。そのどれもが空にまつわるなか、ひとつに怖い話ーー怪談がある。 夏と怖い話が結びつく理由は、交感神経を活発化させることでゆくゆ…

Heal Dig Out your Soul

空は昼の日の目に憧れて 夜は昇る朝日に擦り寄った 心地よさの場末と、辺鄙な善意が混ざり合う 空高い壁を小鳥たちは舞った もし君が底にいて 全ての人に置き去りにされたとしても もし君が心を削いで 全ての人を置き去りにしたとしても 自分の曲を最後にそ…

満月になってからの月が好き

待合室に座ったら、みんながスマホを持っている。だから私も持ってみた。用事のふりしてスクロール。横目でとなりの人を見て、用事のふりしてスクロール。彼は私を見ていない。紺のジャンパーを脱いでいる。冬の外は寒いのに、ここは春くらい暑い。 最近、夢…

NEWS

太陽が月に変わる頃 明かりを灯すと祈ります この道を通らせてください この道の向こうに通らせてください 全員が落ちていきます 見張りは私を追いかけます 他の人は乗り越えようと試みます 私を通らせてください この道の向こうに、あなたが通らせてくださ…

プロローグ

序 これはある蒸し暑い夏、まだ若い彼が見た夢の話。見た目だけでいうなら三十は越しているだろう。が、実のところはまだ二十を過ぎたばかりの青年。彼の半生の経験は――、いやそんなことはどうでもよい。彼はじっと両膝をかかえ、時々窓の外へ目をやりながら…

真夏

夏が終わる。ひぐらしが鳴く。 木陰まで来て、肌を付く熱が鬱陶しい。 干からびて地面になったミミズの上。 水の反射がよく見える。 色の濃い葉も、エントランスを伸びる水跡も やがて来るこの季節だけのものだった。 新緑が散る。ひぐらしが鳴く。 木陰まで…

十四夜

風の日。薄い雲が張る晴れの日。葉と葉、波と波の重なる音が、身体を包む不思議な何かであるかのように思わせた。薄月の朝は始まり、待ち合わせのバス停には三匹の猫がいる。そこには高い建物も、低い建物もない。 まだ夜の雨で湿る地面のアスファルト。土と…

夢を見るのです

夢を見るのです。 私は台車に載せられスーパーを全速力で駆けています。 目的は、騒ぎに乗じてある机の中のテスト用紙をばら撒くこと。 それを仲間が回収すること。 ところが机は発見できず、先生に捕まってしまいました。 仲間はほとんど捕まりました。 泣…

夜なのに空が高い

太陽と、月の光が昇る日。 レディグレイのおかわりを注げと夜はいいました。 君の気が済むまで空を覆う雲を掴んでいろともいいました。 この雲の端であなたはわたしを見つけるのです。 すべての音がなくなってもこの手を離さないのです。 使わないピアノを贈…

愛と光と秘密主義の道

帰りの道を、彼女が右に曲がろうと言うので、右に曲がると、そば屋にせんべい屋、まんじゅうを売る店に揚げもの専門店、履きもの屋に帽子屋、中華料理に焼き肉、イタリア料理にしゃれたコーヒー店、そういうものがある雰囲気の無い、なにも無い、家と、家が…

現代日本版『桃太郎』

耳鳴りがした。 それが過去から聞こえるものなのか、あるいは未来から聞こえたものなのか、わたしにははっきりしなかった。 山奥のなにもない小屋。わたしは男と暮らしていた。男はわたしを好いていたが、わたしは男を好いてはいなかった。ただ、一緒にいた…

4月23日

『あいまいにしないでよ!』 昨日の晩、天音に言われたことが頭から離れず、胸の上を鉛の玉がゴロゴロと転がっているような息苦しさの中、俺は目を覚ました。寝惚け眼をこすりながらカーテンを開けると、塞がった胸の内とは裏腹に、澄み切った青がこちらを覗…